知財高裁(平成7年75日)“有精卵の検査法事件131条2項にいう『特許を無効にする根拠となる事実』とは、無効理由を基礎付ける主要事実をいうものと解されるから、同項は、請求人が主張する無効理由を基礎付ける主要事実を具体的に特定し、かつ、そのうち立証を要する事実については、当該事実ごとに証拠との関係を記載することを記載要件とするものと解される。しかし、同記載要件を欠くことを理由とする法133条3項に基づく却下決定は、合議体による主張内容自体についての判断(請求が不適法であるかどうかの判断を含む)ではなく、審判長による単独の決定として、形式的な事項のみを審査し て、審理を行うことが可能な程度に主張が特定されているかどうかを判断して行うものであるから、無効理由を基礎づける主要事実が具体的に特定されていないことを理由とする審判請求書の却下は、審判請求書の無効理由の記載(補正を含む)を、その記載全体及び提出された書証により容易に理解できる内容を併せ考慮して合理的な解釈をしても特定を欠くことが明らかな場合にされるべきであるし、請求人が主張する無効理由が証拠上認められないということをもって同項の特定を欠くとはいえないことはもちろんのこと、請求人が主張する無効理由が、法定された無効原因についての独自の見解ないし法解釈に基づくものであるため、審判体において無効理由としては失当又は不十分な事実の記載であると思料する場合であったり、また、請求人が主張する無効原因が一事不再理違反に当たるなどの理由により、請求が不適法である場合であっても、このことのみをもって同項の特定を欠くということはできないというべきである」と述べている。

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