知財高裁(平成28年10月11日)“ドライエッチング方法事件”は、「使用者等が、第三者に当該発明を実施許諾することなく自ら実施(自己実施)している場合には、特許権が存在することにより第三者に当該発明の実施を禁止したことに基づいて使用者が得ることができた利益、すなわち、特許権に基づく第三者に対する禁止権の効果として、使用者等の自己実施による売上高のうち、当該特許権を使用者等に承継させずに、自ら特許を受けた従業者等が第三者に当該発明を実施許諾していたと想定した場合に予想される使用者等の売上高を超える部分(超過売上高)について得ることができたものと見込まれる利益(超過利益)が『独占の利益』に該当するものというべきである。この『超過利益』の額は、従業者等が第三者に当該発明の実施許諾をしていたと想定した場合に得られる実施料相当額を下回るものではないと考えられることから、超過売上高に当該実施料率(仮想実施料率)を乗じて超過利益を算定する方法にも合理性があるものと解される」、「これに対し、控訴人X1は、主位的主張として、本件製品に係る売上高から変動費を控除して求められる本件製品の利益率から被控訴人における通常の利益率を控除した本件製品に係る超過利益率を売上高に乗ずることにより求められる額をもって被控訴人が受ける独占的利益・・・・の額である旨主張する。しかし、製品ごとの利益率は、その原材料や販売管理の方法のほか、全体的な製造販売戦略といったその時々の使用者等の事業方針等も含む種々の要素に左右されるものであって、本件製品に係る利益率と被控訴人における通常の利益率との差をもって直ちに全て特許によるものであると見ることの合理性は乏しいというべきである。したがって、この点に関する控訴人X1の主張は採用し得ない」、「超過売上高を求めるにあたっては、法定通常実施権実施分として通常は50ないし60%程度の減額をすべきであるところ、C5F8半導体製造用エッチングガスとしては本件製品が100%の世界シェアを有していること・・・・、本件製品は、競合製品としてC4F6エッチングガスが存在するところ、『性能面で両者に明確な差はないが、C4F6はサプライヤーが複数存在することや、競争により価格が安価になったことから、ユーザーはC5F8からC4F6へとガス種の移行を進めている。』といった市場動向の分析・・・・にもかかわず、・・・・漸減傾向にあるとはいえなお相応の規模の販売実績を上げていることなど諸般の事情を総合的に考慮すると、本件製品に本件発明4に係る特許権を実施したことによる超過売上高は、売上高の50%と見るのが相当である」、「被控訴人が工業技術院に対し支払うべき本件発明1ないし3(本件発明4と同じ技術分野に属するものである。)の実施料は本件製品の売上げの●●●●●とされたこと、・・・・本件発明4に係る特許の属する技術分野における実施料率は、最大値9.5%、最小値0.5%、平均2.9%であることがそれぞれ認められる。これらの事情に加え、本件発明4の内容等諸般の事情を総合的に考慮すると、本件発明4に係る特許を第三者に許諾したと想定した場合の仮想実施料率は、上記平均値(2.9%)とするのが相当である」と述べている。 |