知財高裁(平成28年10月12日)“透明薄膜電界効果型トランジスタ事件”は、「本件発明1、2及び4には、アモルファス薄膜である本件化合物を活性層として用いることを特徴とする透明薄膜電界効果型トランジスタが含まれるが、ZnOの組成であるmは『m=1以上50未満の整数』とされているから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載が、本件発明1、2及び4の実施可能要件を満たすためには、上記mの全範囲にわたってアモルファスの本件化合物薄膜が形成できるように記載されている必要がある」、「本件出願日当時、パルスレーザー蒸着法により、アモルファスのInGaO3(ZnO)m(m=1〜4)を形成することが可能であることは確認できるものの・・・・、mが5以上の場合は開示されておらず、mが5以上のZnOに近い組成ではアモルファス相は得られないとの指摘もされていた・・・・から、当業者は、mが5以上の薄膜の作成は極めて困難と認識していたものと認められる」、「そして、本件明細書には、かかる当業者の認識にもかかわらず、mが5以上50未満であるアモルファスの本件化合物薄膜を作成する方法についての記載はない」、「したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、mが5以上50未満の整数である場合を含む本件発明1、2及び4について、当業者が、アモルファスの本件化合物薄膜を形成することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるということはできないから、実施可能要件を欠くものと認められる」と述べている。 |