知財高裁(平成28年10月19日)“減塩醤油類事件”は、「本件発明1は、食塩濃度7〜9w/w%である減塩醤油において、カリウム濃度(1〜3.7w/w%)、窒素濃度(1.9〜2.2w/v%)及び窒素/カリウムの重量比(0.44〜1.62)を、それぞれ数値範囲によって特定した発明である」、「本件発明1は、食塩濃度7〜9w/w%である減塩醤油における風味の問題点を、カリウム濃度、窒素濃度及び窒素/カリウムの重量比を特定範囲とすることによって解決するものであるから、本件発明1が課題を解決できると認識できるためには、食塩濃度7〜9w/w%の全範囲にわたって、請求項に記載された他の発明特定事項、すなわち、カリウム濃度、窒素濃度、窒素/カリウムの重量比の各数値を、適切に組み合わせれば、他の手段を採用しなくても、上記課題が解決できると認識できることが必要である」、「本件発明1のうち、少なくとも食塩が7w/w%である減塩醤油について、本件出願日当時の技術常識及び本件明細書の記載から、本件発明1の課題が解決できることを当業者は認識することはできず、サポート要件を満たしているとはいえない」、「審決は、『カリウム濃度』が塩味を付け、『窒素濃度』が塩味を増強し、苦みを低減させるという原理が本件明細書から読み取ることができ、食塩濃度が9w/w%において観察された現象が、食塩濃度7w/w%で観察されないという合理的な理由はないと判断した。しかしながら、上記原理だけから、食塩濃度を低下させた場合における具体的な塩味や苦みの程度を推測することはできないし、特定の味覚の強化、弱化が他の味覚に影響を与えずに独立して感得されるという技術的知見を示す証拠も見当たらない。本件発明の課題が解決されたというためには、本件明細書において設定した、塩味が3以上、苦みが3以下、総合評価が○以上という評価を達成しなければならないが、本件発明のうち食塩濃度が7.0w/w%の場合に、上記の評価を達成でき課題が解決できることを、本件明細書の記載から認識することはできない」と述べたものである。 |