知財高裁(平成8年9日)“電気コネクタ組立体事件特許法102条2項を適用するに当たり、特許権者が当該特許発明を実施していることは、同項を適用するための要件ではなく、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、同項の適用が認められると解すべきである」、「証拠・・・・及び弁論の全趣旨によれば、@被控訴人は、LED照明等に用いられるコネクタであるDF7シリーズ(基板対ケーブル低背電源用スウィングロックコネクタ)を製造、販売しているところ、DF7は『簡易ロック』と『強化ロック』の『二重ロック構造』をうたった製品であり、このうち『簡易ロック』は、ケーブルコネクタの側壁に設けられた係止部とレセプタクルコネクタの側壁に設けられた被係止部との係止によるロック構造であり『強化ロック』は、ケーブルコネクタの有するロック突部が、レセプタクルコネクタの有するロック溝部の突出部の下に潜り込み、ロック突部が抜出方向で突出部と当接することによるロック構造であること、A被控訴人は、LED照明等に用いられるコネクタであるDF1シリーズの製品(基板対ケーブル 小型電源用スウィングロックコネクタ)を製造、販売しているところ、DF1シリーズは『簡易ロック』と『強化ロック』の『二重ロック構造』をうたった製品であること、BDF1シリーズの製品は、被控訴人の取引先が製品の採用を検討する際に、被告製品と競合し、実際にも、複数の取引先において、価格差等の理由から被告製品が採用されたことがあったことが認められる。これらの事実によれば、被控訴人は、被告製品と競合する代替品を製造、販売しており、被控訴人には、上記『侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情』が存在するというべきである」と述べている。

特許法の世界|判例集