知財高裁(平成28年10月26日)“商品配達システム事件”は、「引用発明1は、・・・・集合住宅内に設置された宅配ボックスから成り、受取人宛ての荷物が配達され宅配ボックスに保管されると、通信サーバが、荷物の受取人宅宛てに電子メールを送信する宅配ボックスシステムである。そして、引用発明2は、・・・・ボックス等の収納手段を有する集合住宅の玄関などに設置された配送中継装置から成り、利用者の注文した中食が配送され配送中継装置に保管され、その後所定の管理時間が経過しても中食が取られない場合には、配送中継装置が、中食の受取人である利用者のメールアドレスに通知を送る中食配送システムというものである。したがって、引用発明1と引用発明2は、ともに、集合住宅に設置された保管ボックスから成り、配達され保管された利用者宛ての荷物について、システムから利用者に対しメール通知を行う荷物の配送システムという、共通の技術分野に属するものである。そして、引用発明1と引用発明2は、いずれも、荷物の配送システムにおいて、インターネット等を利用して発送者、受取者等の利用者の利便性を向上させるという課題を解決するものということができ、引用発明1のシステムの利便性を向上させるために、利用者端末装置や管理装置を含む引用発明2の構成を組み合わせる動機付けがあるというべきである」、「原告らは、引用例1では、高価な宅配物を対象とするインターネット通販において、高いセキュリティシステムを適用することが開示されているにすぎないのに対し、引用例2では、インターネットを介して中食を発注するシステムが開示されているものの、高価な宅配物を対象とするものではなく、また、2つの暗証番号を入力するといった高度なセキュリティを必要とするものではないから、引用例1と引用例2が対象とする宅配物は全く異なるものであり、単にインターネット通販に係るものであるからといって、引用発明1に引用発明2を組み合わせる動機付けは一切存しないと主張する。しかし、引用例1自体、高度のセキュリティを備えることを必然の構成としているわけではないし・・・・、配送対象の荷物が高価であるか否かや、高度なセキュリティを要するか否かが、技術分野及び課題の共通性を阻害し動機付けを失わせるとはいえないから、原告らの上記主張は理由がない」、「したがって、引用発明1に対し、共通の技術分野に属し、課題においても共通する引用発明2を適用することの動機付けがあり、かつ、適用する上での阻害要因が何ら認められないのであるから、引用発明1におけるユーザのモバイル端末において、引用発明2の技術を適用することで、発注機能を備えるよう構成して相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである」と述べている。 |