東京地裁(平成8年4日)“アンテナ装置事件原告は、平成6年1月8日から平成8年6月末日までの被告製品の売上高に実施料率を乗じた額が本件特許権の侵害による損害額(特許法102条3項)であると主張するところ、上記の売上高は、被告が自認する7867万8224円の限度で認められ、これを上回る額を認めるに足りる証拠はない」、「次に、実施料率についてみるに、証拠・・・・及び弁論の全趣旨によれば、@本件発明は、低姿勢かつ受信感度の良いアンテナ装置の構成に関するものであるところ、被告製品は、小型で低姿勢でありながら受信性能が優れたアンテナ装置であって、被告はこの点を被告製品の宣伝上強調していること、A本件発明は、その実施例のアンテナ装置とほぼ同じ大きさの従来のアンテナ装置に比し、最大利得を約0.5dBd向上させるものであること、B被告製品の上記@の性能は、本件発明に加え、アンテナ素子とアンテナコイルとの接続態様等に特徴のあるアンテナ装置に関する原告の別の特許権・・・・の特許発明を実施することにより実現されたものであること、C上記Bの特許発明が電波の受信というアンテナ装置の中核的な技術を対象とするのに対し、本件発明は部品の構成や配置に関するものであること、D原告は上記Bの特許権に基づき本件の被告製品の対象とする別件訴訟を提起しているが、別件訴訟ではこれ以外の被告のアンテナ装置も対象にしていること、E本件発明の属する電子・通信用部品ないし電気産業の分野のライセンス契約における実施料率については、平均3.3〜3.5%ないし2.9%とする調査結果が公表されていることが認められる。上記事実関係によれば、本件発明は低姿勢かつ受信感度の良いアンテナ装置を提供するものであるが、これによる効果が特に顕著であるとみることは困難であり、他の技術によりある程度は代替可能と解し得るものである。以上の事情を考慮すると、本件における特許法102条3項の損害額は、被告製品の売上額に3%を乗じて算定するのが相当である。そうすると、原告の損害額は236万0346円となる」と述べている。

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