大阪地裁(平成8年月8日)“水中構造物の洗掘防止材事件『公然実施をされた』というためには、発明の内容を秘密にする義務を負わない人が発明内容を知り得る状態で使用等の実施行為が行われたことが必要である。しかるところ、公然実施の対象となるOBネットユニットは、小浜製鋼株式会社によって製造され市販されていた商品にすぎないし、また証拠・・・・からうかがわれる両護岸工事の実施状況や工事内容、工事場所が公共の場であることなどからすれば、OBネットユニットの設置作業に従事した現場作業員が、OBネットユニットの構造について小浜製鋼株式会社から守秘義務を課せられていたことをうかがわせる事情はなく、かえって、工事使用前に、その構造を確認する機会も十分あったものと認められるから、OBネットユニットの本件発明の構成要件D、E、Fを除く構成要件は、それら工事関係者に十分認識されていたといえる。そして、・・・・そのOBネットユニットが、両護岸工事において本件発明の構成要件D、E、Fを充足する態様で使用されたというのであるが、その工事現場には、上記のとおりOBネットユニットの構成を確認した工事関係者が立ち会って、その使用態様を現認したものと推認できるから(なお、構成要件Eを充足する使用対象事態を撮影した写真は僅かであるが、その使用態様が特殊なものとはいえない以上、両護岸工事現場で写真として記録が残っていないOBネットユニットであっても、多くは同様の態様で使用され、工事関係者らによって、その使用態様が現認されていたものと推認できる。)、これらにより、本件発明は、公然と実施されたものと認めて差し支えないというべきである」と述べている。

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