知財高裁(平成8年6日)“船舶事件原告らは、・・・・舵取機室を吃水線よりも上方に位置させることとは別の、緊急時のバラスト水船外排出のための手段は、本件明細書には何ら記載されていないから、構成要件Gの『緊急時に・・・・バラスト水を船外に排水できるように構成する』との記載の追加を含む訂正事項1は、新規事項の追加に該当すると主張する。しかしながら、・・・本件明細書には『舵取機室9は、船舶の吃水線より上方に位置するため、緊急時においてはバラスト水を容易に船外へ排水できるという利点もある・・・と記載されているところ、当業者であれば『舵取機室』内に配設された『バラスト水処理装置』が『吃水線より上方に位置する』ことが『緊急時においてはバラスト水を容易に船外へ排水できるという利点』をもたらすのは、重力の作用を利用することによると理解するとともに、船内に設置された『バラスト水処理装置』内の『バラスト水』を『船外へ排水』するためには、そのようなバラスト水処理装置が吃水線より上方に位置することとは別に、緊急時に開放されて、重力の作用を利用して船内の『バラスト水処理装置』から船外に至る『バラスト水』の流路となる管路、すなわち緊急排水用管路が必要であることを当然に理解することができ、その具体的な構成も、自明な適宜の配管として理解することができる。以上のとおり、本件訂正のうち、構成要件Gに係る部分は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、これと趣旨を同じくする審決の判断に誤りはない。原告らの主張は、理由がない」と述べている。

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