東京地裁(平成28年12月26日)“自動車保険料計算プログラム事件”は、「本件明細書等の記載のみに照らせば、本件発明1の本質的部分とは、『積算距離計数値から実績走行距離を算出するとともに、その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する』ことにあるようにみえなくもない。しかし、ここにいう『積算距離計数値から実績走行距離を算出するとともに、その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する』との部分は、審査請求時における旧請求項1及び2・・・・に係る発明に相当するところ、当該発明は、拒絶理由通知書において、・・・・進歩性を欠く旨の指摘を受けていたものである。そして、この旧請求項1及び2については、旧請求項3(・・・・この旧請求項3の発明については、進歩性を欠く旨の指摘はなかった。)が結合され、新たに請求項1(本件発明1)へと補正されたところ、ようやく特許査定を受けたというのである。そうすると、上記補正後の本件発明1に関しては、上記の『積算距離計数値から実績走行距離を算出するとともに、その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する』との部分は、そもそも従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であるといえるのかどうか疑問があるといわざるを得ない」、「本件明細書等に記載されていない従来技術も参酌すると、本件発明1の本質的部分、すなわち従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分としては、『積算距離計数値から実績走行距離を算出するとともに、その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する』との部分だけでは足りず、これに、出願経過において結合された部分、すなわち、積算距離計の計測日と契約期間の始期日・終期日とのずれについて『実績走行距離の計測期間から求められる単位期間当たりの走行距離に保険期間を乗じて保険期間中の実績走行距離を推定する』部分(第1の補正方法)まで含まれるものと解するのが相当である」、「この点を被告サービスにおいてみると、・・・・被告サービスにおいては第1の補正方法を採用していないのであるから、本件発明1と被告サービスの異なる部分が特許発明の本質的部分ではないということはできない。したがって、本件においては、均等の要件のうち第1要件を満たさない」と述べている。 |