知財高裁(平成28年12月6日)“炭酸飲料事件”は、「原告は、本件訂正発明は数値限定発明であるところ、本件訂正発明の数値範囲を満たせば、本件訂正発明の課題を解決できると当業者が認識できるためには,本件訂正明細書の実施例によりその効果が裏付けられているべきであるが、本件訂正発明のいずれの数値範囲についても、その数値範囲の上下限間の幅に対して半分未満の範囲でしか本件訂正明細書の実施例が記載されておらず、実施例の内容を請求項に記載された数値範囲全体にまで拡張ないし一般化できるとはいえないと主張する。しかしながら、・・・・植物成分、炭酸ガス及び可溶性固形分の含量、甘味量、並びに高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量については、それぞれの数値範囲を逸脱した場合に、本件訂正発明の課題が解決できない旨が本件訂正明細書に十分記載されており、換言すれば、それらの数値範囲内であれば、当業者は、本件訂正発明の課題が解決できると理解するものといえ、また、そのような理解を妨げるような本件出願当時の技術常識があったとは認められない。他方で、スクラロースによって付与される甘味量については、その数値範囲を逸脱した場合に、本件訂正発明の課題が解決できないことまでが本件訂正明細書に記載されているわけではなく、単に、その数値範囲が好ましい旨が本件訂正明細書に記載されているのみであるが、この記載に接した当業者は、その数値範囲を少々逸脱した場合でも本件訂正発明の課題が解決できるであろうと理解するといえる。換言すれば、その数値範囲内であれば、当業者は、本件訂正発明の課題が当然解決できると理解するといえ、また、そのような理解を妨げるような本件出願当時の技術常識があったともいえない。したがって、本件訂正発明が数値限定発明であることを理由とする原告の主張も採用できない」、「以上によれば、サポート要件に関する本件審決の判断に誤りはなく、取消事由3は理由がない」と述べている。 |