知財高裁(平成28年12月6日)“炭酸飲料事件”は、「特許法上の実施とは、@物の発明にあっては、その物の生産、使用等をする行為であり、A物を生産する方法の発明にあっては、その方法により生産した物の使用等をする行為であるから(特許法2条3項1号、3号)、実施可能要件を満たすためには、それぞれ、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、当業者が、@当該物を生産できかつ使用できるように具体的に記載すること、A当該方法により物を生産できかつ使用できるように具体的に記載することが必要である。本件訂正発明は、同1、3、5、7、8が炭酸飲料という物の発明であり、同9が炭酸飲料の製造方法という物の生産方法に関する発明であるから、これらの発明が実施可能要件を満たすためには、それぞれ、上記@又はAを満たす必要がある」、「本件訂正発明の(方法で)炭酸飲料を調製するに当たり、当業者が特段の困難な操作を要するとは認められず、また、その調製に当業者の過度の試行錯誤を要するとも認められない。よって、当業者は、本件訂正発明の(方法で)炭酸飲料を作ることができるというべきであり、『(当該方法により)物を生産でき…る』の要件を満たすといえる」、「また、そのようにして作られた本件訂正発明の数値範囲を満たす炭酸飲料は、本件訂正発明の課題を解決する、すなわち、果汁等の植物成分と炭酸ガスの両者を含有する飲料であって、植物成分の豊かな味わいと炭酸ガスの爽やかな刺激感(爽快感)をバランス良く備えた植物成分含有炭酸飲料であるといえる一方、そのような理解を妨げるような本件出願当時の技術常識があったとも認められない。よって、本件訂正発明の数値範囲を満たす炭酸飲料は、技術上の意義のある態様で使用することができるというべきであり、『物を…使用できる』の要件も満たすといえる」、「以上によれば、実施可能要件に違反しないとした本件審決の判断は結論において誤りはなく、取消事由4は理由がない」と述べている。 |