知財高裁(平成8年24日)“光源モジュール事件補正前発明は、請求項において『前記光方向変換素子に設けられるホルダ片とを有し』と特定され『光方向変換素子』に『ホルダ片』を設けることが記載されるとともに『前記発光素子から放射される光を入射する入射面と、前記入射面から入射した光を反射する反射面と、前記反射面で反射した光を屈折して側面方向へ出射する出射面』を『有する』ことが記載されているところ、この『前記発光素子から放射される光を入射する入射面と、前記入射面から入射した光を反射する反射面と、前記反射面で反射した光を屈折して側面方向へ出射する出射面』は、本願明細書の記載によれば『光方向変換部』と呼ばれるものである。そうすると『光方向変換素子』中には『光方向変換部』と『ホルダ片』を設ける部分が記載されているものの、その『ホルダ片』を設ける部分の具体的形状が特定されていないものと解される。一方、補正発明は『光方向変換部』を明示するとともに『光方向変換素子』の具体的形状、ホルダ片を設ける態様などについて、請求項に記載のとおり『嵌合部が形成されたケース部』に限定したものである。そうすると、本件補正は、補正発明の『光方向変換素子』を前記のとおり規定することによって、補正発明を特定するために必要な事項を限定するものと認められる」、「本件補正は、補正前発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前発明と補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法7条の2第5項2号にいう『特許請求の範囲の減縮』に該当し、これを目的要件違反とした審決の判断は、誤りである」、「被告は、本件補正によれば、補正発明は『光方向変換部(光学的機能を有するもの)により特定されることに加え『ホルダ片』を嵌合するための手段である『嵌合部が形成されたケース部(機械的機能を有するもの)によっても新たに特定されることになり『光方向変換部』により特定される補正前の『光方向変換素子(光学的機能を有するもの)を限定するものでないと主張する。しかし、前記のとおり、補正前発明の『光方向変換素子』は、請求項1にあるとおり『入射面』と、・・・・『反射面』と、・・・・『出射面』とを有する『透明材料』からなる』もの、すなわち光方向変換部』を『有する』、『透明材料』からなるものであるとともに前記光方向変換素子に設けられるホルダ片とを有し』と特定され光方向変換素子』に『ホルダ片』を設けるものである(被告は、これを機械的機能と称する)から、本件補正は、発明特定事項を新たに追加するものではなく、上記主張を採用することはできない」と述べている。

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