大阪地裁(平成8年29日)“棚装置事件特許法102条2項の『利益』とは、当該特許権を侵害した製品の売上合計額から侵害製品の製造販売と直接関連して追加的に必要となった経費のみを控除したものを指すと解するのが相当である」、「弁論の全趣旨によれば、・・・・被告各製品のうち製品シリーズごとに見た場合に販売数量の多い製品を抽出して、それらの製造原価の販売価格に占める割合を算定すると、製造原価率の平均は(中略●%となることが認められる・・・・。この製造原価率は、被告各製品の一部を抽出して算定したものであるが、被告各製品のうち製品シリーズごとに見た場合に販売数量の多い製品を抽出したものであることを考慮すると、基本的に上記の算定方法をもって、被告各製品の平均的な製造原価率と認めるのが相当である」、「よって、販売金額(中略●円・・・・の(中略●%である、(中略●円を製造原価として控除するのが相当である」、「証拠・・・・によれば、被告各製品が掲載されたカタログには、各年用の総合カタログと一部製品のみのカタログ又はちらしがあり、総合カタログには無償のものと有償のものがあること、総合カタログでの被告各製品の掲載比率は3.8%から5.5%であること、一部製品用カタログ等での被告各製品の掲載比率は、0%又は100%であることが認められる。そして、カタログ作製費用は掲載頁数によって増加するものであることからすると、上記のような掲載比率であっても、無償カタログの作製費用のうちの被告各製品相当分は経費として控除するのが相当である。他方、有償のカタログについては、カタログ自体が商品として販売されたのであるから、これを販売のための経費とみるのは相当でないというべきである。以上によれば、カタログ作製費用としては、無償カタログについて・・・(中略円を認めるのが相当である」、証拠・・・・によれば、被告各製品のための金型を製作するための費用として、合計(中略●円が支出されたことが認められ、これは、被告各製品を製造しなければ要しなかった費用と認められるから、同額を控除するのが相当である。この点について、原告は、それらの金型は他の製品に流用し得るものであるから控除すべきでないと主張するが、そのことを認めるに足りる証拠はない」、「被告各製品の試作のために必要な費用は、被告各製品の製造のために特に増加したと認められる場合には、控除すべきであるところ、社内の開発部門の試作担当及び設計担当の人件費は、被告各製品の製造のためだけに必要な経費ではない固定経費であり、被告各製品の製造によって追加的に必要となったとの事情も認められないから、控除対象とはならない。他方、試作のための材料費及び外注費(製図)については、被告各製品の製造がなければ要しなかった費用であるといえるから、控除するのが相当である。証拠・・・によれば、・・・試作のための@材料費(中略円、A外注費(製図)として(中略円の支出をしたことが認められ、この間の製品開発品数のうち、被告各製品が占める割合が(中略%であったことが認められるから、@及びAの合計(中略円の(中略%である(中略円を控除するのが相当である」、「被告各製品の運送費用は、その販売のために増加した分については控除すべきであるが、被告の主張は、被告各製品だけを運ぶことを前提としている点で既に合理性がなく、被告の主張を採用することはできない。そこで、原告が異議を述べない販売金額の(中略%相当額である(中略・・・を認めるのが相当である」、証拠・・・・によれば、被告各製品の段ボール箱の印刷版代として、合計(中略円を支出したことが認められ、同額は被告各製品の製造販売のためにのみ必要といえるから、同額を控除するのが相当である」、「サルバニーニ社の機械は、被告各製品の製造のためにのみ使用されるものではなく、実際に全使用時間の(中略%は他の製品の製造に使用していることを被告も認めていることからすれば、固定経費というべきであり、購入費用を控除することはできないというべきである」と述べている。

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