大阪地裁(平成28年2月29日)“棚装置事件”は、「原告は、覆滅された部分については、特許法102条3項の重畳適用により、実施料相当額を認めるべきである旨主張する。この点、同条2項は、侵害者が侵害製品を製造販売しなかった場合に特許権者が得られたであろう利益(逸失利益)を損害として算定するものであるのに対し、同条3項は、侵害者が侵害製品を製造販売することを前提に、それに対する実施料相当額を損害として算定するものであって、両者は、その前提を異にする別個の損害算定方法を定めたものである。そして、同条2項による損害額を算定するに当たり、推定が一部覆滅された場合でも、・・・・損害額算定の対象とした侵害行為による特許権者の逸失利益は、一部覆滅後のものとして評価され尽くされているから、推定が一部覆滅された部分について同条3項による損害額を認めることは、同一の侵害行為について前提を異にする両立しない損害の賠償を二重に認めることとなり、法が予定するところではないと解するのが相当である。したがって、原告の上記主張は採用できない」と述べている。 |