知財高裁(平成8年30日)“斜面保護方法事件甲4には、・・・・甲4発明が記載されており、落石防止のための斜面安定工法として、網の上から受圧板を介しロックボルトを法面に打ち込むことにより、金網を法面に固定するとの設置態様が示されていることが認められる。しかしながら、甲4には、甲4発明に用いられる網の種類、材質及び要求される性能についての具体的な記載はなく、網を構成する鉄線の引張り強度についての記載も示唆もない。そうすると、甲4に接した当業者において、本件優先日当時に知られていた各種強度の多数の金網の中から、本件発明1のワイヤーの引張り強度『400〜2000N/mm』の数値範囲に含まれる甲5ないし7記載の『塩化ビニル被覆鉄線』及び『亜鉛めっき鉄線』で製作した金網を選択して、甲4発明に適用する動機付けがあったものと認めることはできない。したがって、当業者は、甲4発明と甲5ないし7に記載された事項を組み合わせて相違点1に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたものと認めることはできない」、「これに対し、原告は、甲4記載の網は、地山の圧力を受け止め、万一落石が発生しようとする際に落石を受け止め得る強度を持った金網であることは自明であり、甲4記載の工法(落石防護工)に用いる網として、本件優先日当時公知であった甲5の網(金網)を使用することは、当業者が適宜なし得ることであるから、当業者は、相違点1に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたものである旨主張する。しかしながら、前記・・・・のとおり、甲4に接した当業者において、本件優先日当時に知られていた各種強度の多数の金網の中から、本件発明1のワイヤーの引張り強度『400〜2000N/mm』の数値範囲に含まれる甲5記載の『塩化ビニル被覆鉄線』及び『亜鉛めっき鉄線』で製作した金網を選択して、甲4発明に適用する動機付けがあったものと認めることはできないから、原告の上記主張は採用することができない」と述べている。

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