東京地裁(平成8年3月3日)“オキサリプラチン溶液組成物事件特許請求の範囲の記載をみるに、本件発明は、その文言上、オキサリプラチン、水及び『有効安定化量の緩衝剤』である『シュウ酸またはそのアルカリ金属塩』を『包含』する『安定オキサリプラチン溶液組成物』に係る物の発明であり、緩衝剤であるシュウ酸等のモル濃度を一定の範囲に限定したものである。そして、オキサリプラチン水溶液に『包含』される緩衝剤であるシュウ酸等の量のみが規定され(構成要件G、シュウ酸等を添加することなど上記組成物の製造方法に関する記載はない。この『包含』とは『要素や事情を中にふくみもつこと(広辞苑[第六版]参照)をいうことからすれば、オキサリプラチン水溶液に『包含』されるシュウ酸とは、オキサリプラチン水溶液中に存在する全てのシュウ酸をいい、添加したシュウ酸に限定されるものではないと解するのが相当である」、「これに対し、被告は、・・・・本件明細書の実施例は、添加したシュウ酸の量をもって緩衝剤の量としていること・・・・からすれば『緩衝剤』とは添加したシュウ酸等に限られる旨主張する」、「本件明細書中の実施例に関する記載は、特許請求の範囲にいう『緩衝剤』の意義を解釈するに当たっての考慮要素の1つであるが(特許法0条2項・・・・本件において実施例の記載をもって『緩衝剤』の意義を被告主張のように解することは困難である」と述べている。

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