知財高裁(平成8年30日)“気道流路および肺疾患の処置のためのモメタゾンフロエートの使用事件本件発明の構成が、公知技術である引用発明に他の公知技術や周知技術等を適用することにより容易に想到できるものであるとしても、本件発明の有する効果が、当該引用発明等の有する効果と比較して、当業者が技術常識に基づいて従来の技術水準を参酌した上で予測することができる範囲を超えた顕著なものである場合は、本件発明がその限度で従来の公知技術から想到できない有利な効果を開示したものであるから、当業者がそのような本件発明を想到することは困難であるといえる。したがって、引用発明と比較した本件発明の有利な効果が、当業者の技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものと認められる場合は、本件発明の容易想到性が否定され、その結果、進歩性が肯定されるべきである。そして、当業者が予測できない顕著な効果といえるためには、従来の公知技術や周知技術に基づいて相違点に係る構成を想到した場合に、本件発明の有する効果が、予測される効果よりも格別優れたものであるか、あるいは、予測することが困難な新規な効果である必要がある」、「この場合、本件発明における有利な効果として認められるためには、当該効果が明細書に記載されているか、あるいは、当業者が、明細書の記載に当業者が技術常識を当てはめれば読み取ることができるものであることが必要である。なぜなら、特許発明は、従来技術を踏まえて解決すべき課題とその解決手段を明細書に記載し、これを一般に開示することにより、特許権としての排他的独占権を取得するものである以上、明細書に開示も示唆もされず一般に公開されないような新たな効果や異質な効果が後日に示され、仮に、従来技術に対して有利な効果であるとしても、これを斟酌すべきものではないからである」と述べている。

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