大阪地裁(平成8年44日)“加湿器事件本件発明3と乙4発明の相違点は、・・・・設定湿度と検出湿度の比較を運転スタート時に行うか否かという点だけというべきであるが、両発明の加湿器とも、客観的な加湿運転の態様は、いずれも運転スタート時から水蒸気発生装置が作動し、またこれによってユーザーが加湿器の故障であるとの誤認を防止する効果が奏されていることに変わりはなく、本件発明3の構成である運転スタート時に設定湿度と検出湿度の比較を行うこと自体による効果は認められないから、本件発明3は乙4発明に新たな効果を付け加えるものではないというべきである。したがって、加湿器の制御において、設定湿度と検出湿度を比較すること自体は周知慣用の技術であることも併せ考えると、設定湿度と検出湿度の比較を運転スタート時に行うか否かという上記両発明の構成の違いは課題解決のための具体化手段における設計上の微差にすぎないというべきであるから、本件発明3は乙発明と実質的に同一であるというべきである」、「なお、本件発明3によれば、運転スタート時に設定湿度と検出湿度を比較することで、その結果を加湿運転の態様に反映させることができるから、・・・・実施例のように、その比較結果を用いて設定湿度より検出湿度が低い場合と高い場合とで加湿運転を異ならしめる構成を採用すれば、乙発明とは異なる効果を奏することは可能であり、またその場合は、設定湿度と検出湿度の比較を運転スタート時に行うという乙発明との相違点に技術的に意義があるものといえよう。そして、原告は、相違点としてこの点を強調しているものと理解できるが、・・・・本件発明3は、乙発明と同じ構成、すなわち、運転スタート時に設定湿度と検出湿度の高低に関係なく全く同じ加湿運転をする構成をも技術的範囲に含んでいるから、原告主張に係る効果はある特定の実施例の効果といわなければならず、したがって、この点をもって本件発明3と乙発明の実質的同一性を否定する主張は、採用できないといわなければならない」、「以上によれば、本件発明3・・・・は、乙発明と実質的に同一であり、かつ、本件特許3の出願人はその出願時において、乙発明に係る特許の出願人と同一の者ではなく、発明者も同一の者ではないから、本件特許3は、特許法9条の2に該当するものとして無効審判により無効とされるべきものと認められる」と述べている。

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