知財高裁(平成8年48日)“車両用ルーフアンテナ事件審決は、甲3文献ないし甲5文献に基づき『無線通信機においてコイルアンテナを筒状の保持筒で保持すること』を周知技術として認定した。しかし、コイルアンテナは、例えば、本件発明1と同様のラジオ放送を受信する『魚鰭式アンテナ装置』で用いられることもあれば・・・『車両のキーレスエントリーシステム』で用いられることもあるといったように・・・・、携帯電話機などの無線通信機といった技術分野に限られず広く用いられる汎用的な技術であることが認められる。また、保持筒でコイルアンテナを保持する目的はコイルアンテナの保護や美観の向上などであると解されるから、保持筒でコイルアンテナを保持することも無線通信機の技術分野に特有の技術であるとはいえない。そうすると、甲3文献ないし甲5文献の対象とする技術分野が、無線通信機の技術分野に属するものであるとしても『保持筒でコイルアンテナを保持すること』自体は、それ以外の技術分野も含め、コイルアンテナを用いて電波を送受信する技術分野で広く用いられる技術であると認められるから、無線通信機の技術分野に限定して上記周知技術を認定することは適切ではなく、技術分野を問わず、保持筒でコイルアンテナを保持することが周知技術であったと認定するのが相当である」と述べている。

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