知財高裁(平成28年5月18日)“スロットマシン事件”は、「原告は、本件審決は、原告の主張する引用例1に記載された発明を認定しなかったにもかかわらず、上記発明を認定できないとする理由を示さず、また、段階設定値に係る構成を含まない上記発明に基づく進歩性欠如の無効理由についても判断を示していないから、理由不備の違法がある旨主張する」、「審判請求書・・・・によれば、原告は、本件各発明の無効理由として、@本件発明1は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、あるいは、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであること、A本件発明2は、引用例1、引用例2及び引用例4に記載された発明に基づいて、あるいは、引用例1ないし4に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであること、B本件発明3は、引用例1、引用例2、引用例4及び引用例5に記載された発明に基づいて、あるいは、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであること、したがって、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効にすべきものであることを主張し、引用例1に記載された発明としては、その実施形態に係る記載・・・・を引用し、段階設定値に係る構成を含まない発明を主張したことが認められる。そして、別紙審決書によれば、本件審決には、原告の上記無効審判請求が成り立たないとの結論とともに、その理由として、引用例1の実施形態に係る記載から引用発明1を認定した上で、本件発明1と引用発明1とを対比し、両者の相違点についての容易想到性に係る判断が、証拠による認定事実に基づき具体的に明示されているものということができる。ところで、本件審決が認定した引用発明1は、段階設定値に係る構成を含む発明であり、かかる構成を含む点において、原告の主張とは異なる。そして、本件審決は、原告の主張する引用例1に記載された発明を認定しなかった理由を明示的に記載していない。この点、本件審決は、措辞必ずしも適切とはいえないが、特許法が審決書に理由を記載すべき旨定めている趣旨(サイト注:昭和59年3月13日の最高裁判決参照)・・・・に照らせば、引用発明の認定に係る原告の主張を排斥する理由が明示的に記載されていないからといって、理由が記載されていないというわけではない。この点を措いても、本件審決は、相違点1が一致点であって、相違点ではないとしても、本件発明1と引用発明1とは、相違点2及び4の点で相違するとし、これらの相違点の容易想到性に係る判断を示している・・・・。原告の理由不備に係る主張は、要するに、本件審決における引用発明1の認定の誤りを主張するものにすぎない。以上によれば、本件審決に、審決の理由は示されており、審決の理由に不備があるということはできない」と述べている。 |