知財高裁(平成8年62日)“魚釣り用リール事件甲1発明と甲2に記載された事項は、いずれも魚釣り用リールに関するものであり、甲2には、磁気シールの装着箇所につき『内装部品の外気に接触する側であればどのような位置でもよい』・・・・との記載があることが認められる。しかしながら、甲2には、実施形態として、軸受の近辺や、軸受そのものを磁気シール構造にしたり、軸受と磁気シールをユニット化した変形が記載されており・・・・、ワンウェイクラッチ151が記載されたスピニングリールにおける実施形態2において、ワンウェイクラッチ151が設けられる収容凹部の開口部に磁気シール構造を設けることについての記載はなく、一方向クラッチを含む収容凹部内に収容される駆動要素の防水・・・・という本件訂正発明の課題を認識するに足りる記載はない。したがって、甲2から、磁気シール機構を一方向クラッチを含む収容凹部内に収容される駆動要素の防水に適用する動機付けは認められない。また、甲1にはカバー部材は、内周側に内輪の外周面に当接し断面が先細りのリップ部を有する少なくとも一部が弾性体製の部材である。この場合には、カバー部材のピニオンギアとともに回転する内側部材に当接する部分に先細りのリップ部を設けたので、内側部材との接触抵抗が小さくなり、シール構造を採用しても、ロータの回転抵抗の増加を可及的に抑えることができる・・・・との記載があり、かかる弾性体の部材によるシールについて、防水性能が安定しない、低下する・・・・、回転部品の回転性が低下する・・・・という本件訂正発明の課題を認識するに足りる記載はない。したがって、甲1から、カバー部材5によるシール機構を他のシール機構に変更する動機付けは認められない。以上によれば、甲1発明に甲2に記載された事項を適用することに動機付けがあるとは認められない」、「したがって、本件訂正発明1は、本件出願時、当業者が、甲1発明及び甲2に記載された事項から容易に発明をすることができたとはいえない」、「原告は、・・・・甲2に記載された事項につき、甲1発明と、技術分野が共通すると主張する。確かに、甲1発明と甲2に記載された事項は、いずれも魚釣り用リールに関するものである・・・・。しかしながら、・・・・甲2には、一方向クラッチを含む収容凹部内に収容される駆動要素の防水という本件訂正発明の課題を認識するに足りる記載はなく、甲2から、磁気シール機構を一方向クラッチを含む収容凹部内に収容される駆動要素の防水に適用する動機付けは認められない。したがって、原告の前記主張は、採用できない」、「原告は、・・・・本件訂正発明1と甲2に記載された事項、本件訂正発明1と甲1発明は、課題が共通する、本件訂正発明1と甲2に記載された事項は、作用・機能が共通するとも主張する。しかしながら、原告の前記主張内容は、本件訂正発明1と甲1発明又は甲2に記載された事項との共通性を主張するものであり、これらのことによって、甲1発明に甲2に記載された事項を適用することの動機付けは導き出せないから、失当である」と述べている。

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