知財高裁(平成8年63日)“図書保管管理装置事件本件第1次判決における・・・・相違点3に係る容易想到性の判断は、本件第1次審決を取り消すものとした判決主文が導き出されるのに必要な事実認定又は法律判断にわたるものであるから、取消判決の拘束力(行政事件訴訟法3条1項)により、本件審決を行う審判官は、上記判断に抵触する判断をすることは許されないものというべきである。なお、本件第1次判決は、本件第1次訂正後の第1次訂正発明1を前提としたものであるのに対し、本件審決は、本件訂正後の本件発明1を前提としたものであるところ、本件訂正によって第1次訂正発明1から変更された構成は、・・・・請求項1のうち、二重下線が付された部分(すなわち、@書庫の複数の棚領域に、搬送手段によってコンテナを取り出す間口に対して奥行き方向に収容されるコンテナの数について『複数』とされていたのを『2個』と特定する点、及びA『前記奥行き方向に2個収容されたコンテナのうち、手前側のコンテナを前記空きのあるコンテナとして優先的に使用する』との構成を付加した点)のみであり、本件第1次判決における・・・・相違点3に係る容易想到性の判断は、これらの訂正によって影響を受けるものではないというべきであるから、当該判断の拘束力は、本件審決の判断にも及ぶものと考えられる」、「これに対し、原告は、本件第1次判決の前提とした事項に変更があるなどの特段の事情がある場合には、当該判決の拘束力は生じないとした上で、本件第1次判決は、相違点2につき甲4発明の認定を本質的に誤っており、そのため、相違点3に係る容易想到性判断の前提に誤りがあったものであるから、本件第1次判決の相違点3に係る判断については、上記特段の事情があり、拘束力は生じない旨主張する。しかしながら、原告の上記主張は、結局のところ、確定した本件第1次判決の判断内容に誤りがあることを根拠として、当該判決に拘束力が生じない旨を主張するものであり、取消判決に拘束力が認められる趣旨に照らし、失当というべきである」、「相違点3に係る本件発明1の構成を得ることは当業者が容易になし得たことであるとした本件審決の判断は、本件第1次判決の拘束力に従い、その判断に沿った判断をしたものであるから、当該判断に取り消すべき違法がないことは明らかである」と述べている。

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