知財高裁(平成8年69日)“振動機能付き椅子事件控訴人は、本件特許の出願時、座席を連続して揺動させることが可能な乳幼児用の椅子等であって、揺動制御手段としてソレノイドを有するものについて、旧請求項1においては、座席支持機構を特段限定せず、旧請求項2においては、座席支持機構をロッド2点支持方式に限定し、旧請求項3においては、座席支持機構を、座席とベースとの間に、ベースに対して座席が『水平往復動可能なスライド手段を設けたことを特徴とする』ものに限定していたものである。そして、控訴人は、本件補正により、旧請求項1を、本件特許の特許請求の範囲から削除し、その範囲を旧請求項2及び旧請求項3に限定したものである。このように、控訴人は、本件補正において、座席を連続して揺動させることが可能な乳幼児用の椅子等であって、揺動制御手段としてソレノイドを有するものについて、拒絶理由通知に対応して、座席支持機構を特段限定していない旧請求項1を削除し、座席支持機構にロッド2点支持方式を採用する旧請求項2(本件発明)及び座席とベースとの間に、ベースに対して座席が『水平往復動可能なスライド手段を設けたことを特徴とする』方式を採用する旧請求項3に限定したものである。そして、本件発明の出願時には既に、座席を連続して揺動させることが可能な乳幼児用の椅子等の座席支持機構として、コロと湾曲レールを利用した方式が存在することは周知であり・・・・、コロと湾曲レールを利用する方式に係る座席支持機構は、上記のとおり削除された旧請求項1に係る座席支持機構の範囲内に客観的に含まれるものである。したがって、控訴人は、コロと湾曲レールを利用する方式に係る座席支持機構についても、本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したもの、又は外形的にそのように解されるような行動をとったものと評価することができる。よって、均等の第5要件の充足は、これを認めることができない」と述べている。

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