知財高裁(平成8年73日)“アンカーピン事件引用発明1はアンカーに係るものであり、引用発明2はアンカーボルトに係るものであるから、同一の技術分野に属するものということができる。そして、引用発明1は、・・・・斜面に敷設して落石等を防護するための防護網に張設するロープ等を固定するアンカーに係るものであり、このようなアンカーにおいて、対象物を確実に固定するために引き抜き耐力を高めることは、自明の課題ということができる。他方、引用発明2の特徴は、・・・・コンクリート構造物の縁端拡幅等の工事においてアンカーボルトをボアホールに固定する通常の工法につき、アンカーボルトの引き抜き力に対してボルトの最大能力まで力を発揮させるためには、ある程度の所定の長さを要するので、定着長さを短くすることができないなどの課題に対し、その解決手段として、テーパーナット3を取り付けたアンカーボルト3をボアホール拡張穴2aに挿入するという構成を採用し、同構成により、引き抜き耐力が向上するなどの効果が得られるというものである。以上に鑑みると、当業者は、引用発明1において、対象物を確実に固定するために引き抜き耐力を高めるという自明の課題の解決手段として、引き抜き耐力を向上させるという効果を奏する引用発明2の適用を試みるものということができる」、「本願発明は、引用発明1及び2に基づいて容易に想到することができたものということができる」と述べている。

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