東京地裁(平成28年8月30日)“ナビゲーション装置事件”は、「原告は、本件発明において、探索開始地点と誘導開始地点とを直接比較することは本質的部分ではないと主張する。しかし、均等の第1要件における本質的部分とは、当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術にみられない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきであるところ、本件発明は、従来技術では経路探索の終了時にいくつかの経由地を既に通過した場合であっても、最初に通過すべき経由予定地点を目標経由地点としてメッセージが出力されること・・・・を問題とし、このような事態を解決するために、通過すべき経由予定地点の設定中に既に経由予定地点のいずれかを通過した場合でも、正しい経路誘導を行えるようなナビゲーション装置や方法を提供することを目的としており・・・・、具体的には、車両が動くことにより、探索開始地点と誘導開始地点のずれが生じ、車両が、設定された経路上にあるものの、経由予定地点を超えた地点にある場合に、正しく次の経由予定地点を表示する方法を提供するものである・・・・。このように、本件発明が、車両が動くことにより探索開始地点と誘導開始地点の『ずれ』が生じ、車両等が経由予定地点を通過してしまうことを従来技術における問題とし、これを解決することを目的として、上記『ずれ』の有無を判断するために、探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の異同を判断することを定めており、この点は、従来技術にはみられない特有の技術的思想を有する本件特許の特徴的部分であるといえる。そして、本件明細書・・・・において、上記『ずれ』を判断する方法として、上記両地点を直接比較する方法以外の方法は何ら記載されておらず、それ以外の方法が想定されていたとは認められない。また、・・・・本件特許に係る出願経過からも、探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の異同を判断することが本件発明の本質的部分であることは明らかである。なお、原告自身も、本件発明においては『探索開始地点に関する情報』と『誘導開始地点』とを比較する旨主張している・・・・ところ、上記『探索開始地点に関する情報』の中核は『探索開始地点』自体であるから、原告の上記主張を前提としても、本件特許において、探索開始地点と誘導開始地点との比較が本質的部分であるといえる。以上からすれば、探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の異同を判断することが本件発明の本質的部分というべきであり、かつその比較方法としては、両地点を直接比較することが当然に予定されているものであって、これに反する原告の主張は採用できない」、「本件発明の構成要件Gを被告装置の構成に置換することは少なくとも均等の第1・・・・要件を充足しないため、被告装置が本件発明と均等であるとはいえない」と述べている。 |