知財高裁(平成28年9月21日)“環状受容体関連蛋白ペプチド事件”は、「@RAPペプチドの受容体結合に関与ないし影響を与えるアミノ酸残基がどこかということが本件出願日当時の技術常識であり、その結合する領域のアミノ酸残基を変異させれば、受容体との結合親和性が変化することが本件出願日の技術常識であったとしても、そのアミノ酸残基を変異させた場合に、結合親和性を向上させる手法は明らかでなく、また、A本願発明で特定されるアミノ酸配列は、50個の連続するアミノ酸のうち最大15個のアミノ酸の変異(挿入、欠失又は置換)を許容するものであって極めて多数に及ぶ一方、B本願明細書に記載された本願発明の実施例はわずか3個であって、その内容も、環化のためのシステインの導入を含めた4、5個のアミノ酸置換を行った、『67〜75アミノ酸長の環状』のぺプチドで、『配列番号97に100%または98%(1個の変異)同一である50個の連続するアミノ酸』を含む、配列番号97と非常に同一性の高いアミノ酸配列を有しているものにすぎないから、本件出願日当時の当業者は、本願発明の環状RAPペプチドを製造するために、膨大な数の環状RAPペプチドを製造して34個のCR含有蛋白との結合親和性を調べるという、期待し得る程度を超える試行錯誤を要するものと認められる。したがって、本願発明は実施可能要件を欠くものであり、原告の取消事由には、理由がない」と述べている。 |