知財高裁(平成8年98日)“潤滑油組成物事件当業者は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載や技術常識を考慮しても、本願発明の粘度指数向上剤の化学構造を知ることができない。結局、当業者は、本願発明の粘度指数向上剤を入手するために、本願明細書の記載に基づいて、一般式(1)の構造単位となる単量体0.1〜0モル%と、その他の任意の(メタ)アクリレート単量体や任意のオレフィン等に由来する単量体を含み、かつ、側鎖β構造を有する単量体と直鎖構造を有する単量体との混合物を共重合して粘度指数向上剤を製造した後、その3C−NMRを測定し、M1/M2が0.2〜3.0の範囲に含まれるか否か確認するという作業を、極めて多数の粘度指数向上剤について繰り返し行わなくてはならない。そうすると、当業者が、本願発明の粘度指数向上剤を製造して入手するには、過度の試行錯誤を要するといわざるを得ない。したがって、本願明細書は、当業者が実施できる程度の明確かつ十分に記載されたものとは認められない」と述べている。

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