知財高裁(平成8年98日)“ティシュペーパー製品の製造方法事件特許請求の範囲、本件第2明細書及びJIS規格のいずれにも記載されていない事項は、構成要件yの静摩擦係数の測定方法において規定されていないというべきであり、そのような事項については、技術常識を参酌し、異なる測定方法が複数あり得る場合には、いずれの方法を採用した場合であっても構成要件yの数値範囲内にあるときでなければ、構成要件yを充足するとはいえない。なぜなら、当業者において、構成要件yの静摩擦係数の測定方法において規定されている事項については、同規定に従い、上記測定方法において規定されていない事項については、あり得る複数の測定方法から適宜に1つを選択して静摩擦係数を測定した結果、構成要件yの数値範囲外であったにもかかわらず、上記複数の測定方法のうち別のものを選択して測定すれば、構成要件yの数値範囲内にある静摩擦係数を得られたとして、構成要件yの充足性を認め、特許権侵害を肯定することは、第三者に不測の利益を負担させることになるからである。しかも、このような事態は、特許権者において、静摩擦係数の測定値に影響を及ぼす測定条件を特許請求の範囲又は明細書において明らかにしなかったことから生じたものということができる。そうすると、上記の不測の不利益を第三者に負担させることは相当ではないから、構成要件yの静摩擦係数の測定方法に規定されている事項につき、同規定に従って測定している限り、上記測定方法に規定されていない事項についてあり得る複数の測定方法のうちいずれの方法を採用した場合であっても、静摩擦係数が構成要件yの数値範囲内にあるときでなければ、構成要件yを充足するということはできない」と述べている。

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