知財高裁(平成8年99日)“棚装置事件本件発明と甲5発明の相違点のうち争いのない相違点Aは、本件発明は『外壁と内壁との間にはナットを隠す空間が空いていて内壁の先端部は基板に至ることなく外壁に向かって』いるのに対し、甲5発明はそのような構成を具備していない点である。本件発明と甲5発明との相違点Aに係る本件発明の構成が当業者にとって容易想到であったというためには、少なくとも上記『外壁と内壁との間には・・・・空間が空いていて内壁の先端部は基板に至ることなく外壁に向かって』いるとの構成が公知文献に開示又は示唆されていなければならない。そこで、まず、上記構成を開示又は示唆する文献等があるかを検討するに、・・・・原告が提出する甲2、甲6ないし甲0の各文献のいずれにも上記構成が、開示ないし示唆されているといえるものは見当たらない。次に、原告は、金属製の棚板において、その四辺すべてを折り曲げ形成して周囲に側壁を形成することは周知の事項であるとして、甲9文献ないし甲1文献を提出し、そのうちの甲0文献及び甲1文献に記載された側壁は、四辺すべてに中空部を有すると主張するので、上記各文献についても検討するに、甲9文献ないし甲1文献にも同様に、少なくとも『内壁の先端部は基板に至ることなく外壁に向かっており』との構成は開示ないし示唆されているとはいえない」、「原告は、審決は、・・・・『内壁の先端部は基板に至ることなく外壁に向かっている構成』の中空部とすることは、当業者が適宜なし得たこととはいえないと認定するけれども、金属製棚板に側壁を折り曲げ形成するに当たり『内壁の先端部が基板に至ることなく外壁に向かっている構成』とすることは、金属板の曲げ加工見本に示された形状の中空部(甲2、3。サルバニーニ社の機械を用いて行える金属製棚板の側壁の曲げ加工の一例。以下『甲2文献等』という)を採用すれば足りる、金属製棚板の四辺に、上記中空部の側壁を採用することは、当業者にとって何ら困難なことではなく、適宜なし得ることである旨主張する。原告は、本訴において、本件特許に係る出願の出願日における周知技術を示す文献として、甲2文献等を提出するものと解される。しかし、甲2文献等に示されている曲げ構造は、内壁の連接部と反対側の端部が『外壁に向かって延びるように』曲げられており『傾斜部』になっている構成が開示されていることが認められるものの『傾斜部』の先端から外壁に沿って伸びる部分が存在し、当該部分が外壁と重なることで、本件訂正明細書の図(D)と同様、外壁と重なる『重合部』を有する内壁の構造となっているため『内壁の先端部は基板に至ることなく外壁に向かって』いるものではないことが認められる。したがって、甲2文献等には『内壁の先端部が基板に至ることなく外壁に向かって』いる構成が開示又は示唆されているということはできない」、「以上によれば、原告が提出した全ての公知文献(各証拠)によっても、相違点Aに係る本件発明の構成が開示ないし示唆されていることを認めるに足りる証拠はない。したがって、甲5発明の棚板の壁部の構成をあえて異なる構成に変更する動機付け等が存在するかどうかについて判断するまでもなく、甲5発明の棚板の壁部の構成を『外壁と内壁との間にはナットを隠す空間が空いていて内壁の先端部は基板に至ることなく外壁に向かっており』との構成に変更して、相違点Aに係る本件発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たとはいい難い」と述べている。

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