知財高裁(平成29年1月23日)“成形部品を被覆圧延鋼板の帯材から型打ちによって製造する方法事件”は、「原告は、本件特許の特許請求の範囲における熱処理前の熱処理用鋼板を被覆する『亜鉛ベース合金』の『合金』について、金属間化合物を含むものか、含まないものかが明確ではないから、これを含まないものと一義的に解釈した上で、上記『亜鉛ベース合金』は明確であるとした本件審決の判断は誤りである旨主張する」、「『合金』の用語は、一般に『固溶体、金属間化合物、あるいは金属相の混合物として2個以上の元素を含む金属生成物』・・・・を意味するものとされるから、一般に『合金』が金属間化合物を含むものであることは、本件特許の優先日前からの技術常識である(このことは、当事者間に争いがない。)。したがって、本件特許の特許請求の範囲の『亜鉛ベース合金』における『合金』についても、特段の事情がない限り、上記のような一般的な意味に従って、金属間化合物を含むものとして解釈されるべきである」、「そこで、本件特許の特許請求の範囲の記載や本件明細書の記載において、上記『亜鉛ベース合金』における『合金』が、一般的な意味とは異なり、金属間化合物を含まないものと解釈されるべきことを根拠づける記載があるか否かにつき検討する」、「本件特許の特許請求の範囲の記載や本件明細書の記載に照らしても、上記『亜鉛ベース合金』における『合金』について、金属間化合物を含まないものと解釈すべき特段の事情は認められないから、『合金』の意味は、一般的な意味に従って、金属間化合物を含むものと解するのが相当である」、「上記・・・・によれば、本件特許の特許請求の範囲の『亜鉛ベース合金』における『合金』は、用語の一般的な意味と同様に、金属間化合物を含むもの、すなわち『固溶体、金属間化合物、あるいは金属相の混合物として2個以上の元素を含む金属生成物』を意味するものと解釈されるのであり、金属間化合物を含むものか、含まないものかが明確でないとはいえない。そうすると、本件審決の判断は、上記『亜鉛ベース合金』における『合金』について、金属間化合物を含ないものとする点においてその解釈を誤るものではあるが、上記『合金』の意味が明確であり、本件特許に明確性要件違反の無効理由はないとした結論に誤りはない」と述べている。 |