知財高裁(平成29年1月23日)“成形部品を被覆圧延鋼板の帯材から型打ちによって製造する方法事件”は、「原告は、本件明細書の発明の詳細な説明には、熱処理前の『亜鉛ベース合金』に相当するものとして、実施例2における亜鉛50%、アルミニウム50%の亜鉛アルミニウム合金被膜が記載されているだけであり、亜鉛を50%以上含有し、残部がアルミニウム以外の任意の元素である合金被膜については何ら記載されておらず、このような合金被膜を熱処理した際に、どのような金属間化合物が生じるかは不明であり、また、亜鉛以外の成分いかんによって合金の特性は異なり、当該金属間化合物が『腐食に対する保護及び 鋼の脱炭に対する保護を確保し且つ潤滑機能を確保』し得るかも不明であるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、『亜鉛ベース合金』を『亜鉛アルミニウム合金(亜鉛含有率50%以上)』と限定しない限り、サポート要件・・・・に違反するとして、これと異なる本件審決の判断の誤りを主張する」、「本件明細書の発明の詳細な説明に、熱処理前の『亜鉛ベース合金』の具体例として亜鉛50%、アルミニウム50%の亜鉛アルミニウム合金被膜しか記載されていないとしても、当業者であれば、本件特許の優先日当時の技術常識と本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、上記以外の『亜鉛ベース合金』の被膜をも想起し、これらの被膜を熱処理することによって本件発明に係る課題を解決できることを理解し得るものといえる」、「本件特許の特許請求の範囲における熱処理前の『亜鉛ベース合金』について、亜鉛50%、アルミニウム50%の亜鉛アルミニウム合金以外の場合がサポートされていない旨の原告の主張は理由がない」と述べている。 |