東京地裁(平成29年1月27日)“盗難防止タグ事件”は、「『暗号』とは、一般に、『通信の内容が第三者にもれないように、おたがいに約束して使う記号(のしくみ)』(三省堂国語辞典第7版・・・・)、『秘密を保つために、当事者間にのみ了解されるようにとり決めた特殊な記号・ことば。あいことば。』(広辞苑第4版・・・・)、『第三者に通信内容を知られないように行う特殊な通信(秘匿通信)方法のうち、通信文を見ても特別な知識なしでは読めないように変換する表記法(変換アルゴリズム)のこと』(ウィキペディア・・・・)、『秘密にしたい情報をかき混ぜて(暗号)特定の者以外にはその内容が解らないようにすること。』(情報通信用語辞典・・・・)、『情報の意味が当事者以外にはわからないように、情報を変換すること』(エンサイクロペディア電子情報通信ハンドブック・・・・)との意味を有するとされている。また、『コード』とは、『文字や記号、数字などをコンピューターが識別するためにまとめられた符号』(IT用語辞典BINARY・・・・)、『データを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの』(情報通信用語辞典・・・・)との意味を有するとされている。以上を前提にすると、本件発明4及び6の構成要件A4、B4及びB6にいう『暗号コード』とは、通信の内容が第三者に知られることのないように、当事者間にのみ了解されるように取り決めた特殊な記号、文字ないし数字をまとめた符号を意味するものと解するのが相当である」、「原告は、本件発明4及び6にいう『暗号コード』とは、コードの一部を任意の数字(信号)を組み合わせたものとしてリセットコードを設定し、送受信するものにすぎず、辞書等における『暗号』の意味とは異なるものであって、このことは本件明細書等の記載からも明らかであると主張する。しかし、明細書の技術用語は、特に明細書の中で定義して特定の意味に使用している場合を除き、原則として学術用語を用い、その有する普通の意味を用い、かつ特許請求の範囲及び明細書全体を通じて統一して使用されなければならないところ(特許法施行規則24条参照)、本件明細書等においては、『暗号コード』の意義に関し、・・・・『『暗号』は4桁の暗号コードである。』と記載されているにすぎず、『暗号コード』ないし『暗号』の意味が原告主張のようなものであることにつき、何らの明確な定義付けもされておらず、また辞書等における『暗号』の意味と異なるなどといった示唆もされていない。したがって、『暗号コード』とは電気通信技術に関する技術的知識を有する当業者が理解する通常の意味で解釈すべきであるから、原告の上記主張は採用することができない」と述べている。 |