知財高裁(平成9年4日)“荷電粒子ビーム衝突型核融合炉事件本願明細書には、本願発明を実施するために必要な、イオン回収路及び粒子を分別する装置をどのように構成するかについて、具体的に記載されているとは認め難い。また、かかる点が当業者にとって自明の事項であるともいい難い。したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない」、「原告は、原子核物理学又は素粒子物理学の分野で使用される機器を扱う当業者であれば、荷電粒子の挙動をシミュレーションする技術を保有しているから、イオン回収路及び粒子を分別する装置について、設計するのに十分な知識を有している、この種の機器は、シミュレーションを行って構造を決定し、製造するものであるから、シミュレーションが必要なことをもって、本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないと結論付けることはできないなどと主張する。しかし、イオン回収路及び粒子を分別する装置の具体的構成が本願明細書に記載されていない以上、イオン回収路及び粒子を分別する装置を『荷電粒子の挙動をシミュレーション』して『設計』するための前提を欠いており、そのような『シミュレーション』や『設計』は、当業者が過度な試行錯誤を必要とするものである。したがって、原告の上記主張は理由がない」と述べている。

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