知財高裁(平成29年10月25日)“光学ガラス事件”は、「本件審決は、本願明細書の実施例に記載されたガラス組成の数値範囲については、本願物性要件を満たす光学ガラスが得られることを確認することができるが、実施例に記載されたガラス組成の数値範囲を超える部分については、本願物性要件を満たす光学ガラスが得られることが、実施例の記載により裏付けられているとはいえないとし、また、その他の発明の詳細な説明のうち、部分分散比に影響を与える成分・・・・についても、好ましい範囲等として記載される数値範囲が実施例に記載されたガラス組成の数値範囲より広い範囲となっていることから、実施例の数値範囲を超える部分について、本願物性要件を満たす光学ガラスが得られることを裏付けるとはいえないとし、更に、本願出願時の技術常識(光学ガラスの物性は、ガラスの組成に依存するが、構成成分と物性との因果関係が明確に導かれない場合の方が多いことなど)に照らしても、本願組成要件の数値範囲にわたって、本願物性要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者が認識し得るとはいえないと判断したものである。このように、本件審決の判断は、・・・・当業者が本願物性要件を満たす光学ガラスが得られるものと認識できる範囲を、実施例として具体的に示されたガラス組成の各数値範囲に限定するものにほかならないところ、・・・・このような判断は誤りというべきである。本件審決は、・・・・本願のサポート要件充足性を判断するに当たって必要とされる、本願物性要件を満たす光学ガラスを得ることができることを認識し得る範囲が本願組成要件に規定された各成分における数値範囲の全体に及ぶものといえるか否かについての具体的な検討を行うことなく、実施例として示された各数値範囲が本願組成要件に規定された各数値範囲の一部にとどまることをもって、直ちに本願のサポート要件充足性を否定したものであるから、そのような判断は誤りといわざるを得ず・・・・、また、その誤りは審決の結論に影響を及ぼすものといえる」、「以上のとおり、本願につき、サポート要件に適合しないものとした本件審決の判断は誤りであり、この点については、・・・・改めて特許庁における審理・判断(必要な拒絶理由通知を行うことを含む。)がされるべきものといえる」と述べている。 |