知財高裁(平成9年6日)“ピストン式圧縮機における冷媒吸入構造事件引用発明3は、斜板に作用する圧縮反力が回転軸の回りに均等に作用しないで一方に偏っていることなどを原因として、ロータリバルブのローターとバルブシリンダとの間のクリアランスが大きくなりやすく、その結果として、幾つかの吸入ポートの周囲から圧縮された冷媒等の流体が漏洩することを課題とし、このクリアランスを小さくするための技術を採用したものである。一方、スラスト軸受手段として径の異なる環状の突条を当接させるという技術は、斜板に作用する圧縮反力を回転軸に伝達するものであるから、ロータリバルブのローターとバルブシリンダとの間のクリアランスを大きくするものであって、その結果として、冷媒等の流体が漏洩する可能性を高めるものである。そうすると、スラスト軸受手段として径の異なる環状の突条を当接させるという技術は、冷媒等の流体が漏洩する可能性を高めるものであって、引用発明3が解決しようとする課題に反するものであるから、仮にこれが周知技術であったとしても、当業者は、引用発明3にこのような技術を適用しようとは考えないというべきである」、「したがって、仮に原告主張の周知技術が認められたとしても、引用発明3に同周知技術を適用する動機付けを欠くから、引用発明3及び同周知技術に基づき、相違点3に係る本件発明の構成を当業者が容易に想到できたものということはできない」と述べている。

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