知財高裁(平成9年)“ガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド事件原告は、本願発明は、本願発明の構成とすることにより、本願明細書に記載された『消音手段を簡易な構造とし、噴射ヘッドをコンパクトに構成でき、既存の設備にもそのまま適用することができる』という作用効果、より具体的には、円柱状の多孔性の材料を筐体内に確実に保持するようにしながら、大気中に消火剤を放出する際の消火剤の出口となるその他方の端面の大気に開放される面積を大きく取ることができ、短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する際の障害や騒音の発生要因をなくすことができるという、引用発明、引用文献2記載技術及び周知技術から当業者が予測できる作用効果以上の格別な作用効果を奏するものであるといえると主張する。しかしながら、引用発明において、低騒音の消火ガス放出用ノズルを提供するという目的を損なわないようにした上で、引用文献2記載技術を適用できることは明らかであるから、引用発明と引用文献2記載技術に基づいて、引用発明の焼結フィルタ1の外面(底面)が、ベースボディ202に形成された複数の孔1を介して大気に開放されるようになっているものに換えて、中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持する構成にした場合に、本願明細書に記載された『消音手段を簡易な構造とし、噴射ヘッドをコンパクトに構成でき、既存の設備にもそのまま適用することができる』という効果を奏することは、当業者であれば当然に予測し得ることである。本願発明の効果については、引用発明と引用文献2記載技術等に基づいて、当然に生じるものであって、当業者が予測できるものであるといわざるを得ない。なお、大気中に消火剤を放出する際の消火剤の出口となるその他方の端面について『大気に開放される面積を大きく取る』旨の原告の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではない・・・・。したがって、原告の上記主張は採用することができず、取消事由4は理由がない」と述べている。

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