知財高裁(平成29年12月21日)“ランフラットタイヤ事件”は、「引用発明と甲2技術は、いずれも空気入りタイヤに関するものであり、技術分野が共通する。また、引用発明は、ランフラットタイヤのサイドウォール部の補強ゴムから発生した熱をより早く表面部に移動させて放熱効果を高め、カーカスやサイド補強ゴムの破壊を防止することを課題とする。甲2技術は、空気入りタイヤのブレーカ端部の熱を逃がし、ブレーカ端部に亀裂が生じるのを防止することを課題とする。したがって、引用発明と甲2技術の課題は、空気入りタイヤの内部に発生した熱を迅速に逃すことにより当該部位の破壊を防止するという点で共通する。さらに、引用発明は、タイヤの外側表面の一定部位を、適当な表面パターン形状にすることによって、タイヤの回転軸方向の投影面積の表面積を大きくし、サイド補強層ゴムから発生した熱をより早く外部表面に移動させ、外気により効果的に拡散させるものである。甲2技術は、タイヤの外側表面の一定の領域に、多数の凹部を形成することによって、その領域で広い放熱面積を形成して、温度低下作用を果たさせるものである。したがって、引用発明と甲2技術の作用効果は共通する。加えて、甲2技術は、多数の凹部を形成することによって温度低下作用を果たさせるに当たり、引用発明のように表面積の拡大だけではなく、乱流の発生も考慮するものである。よって、引用発明に甲2技術を適用する動機付けは十分に存在するというべきである」、「引用発明に甲2技術を適用した場合、その凹凸部の構造は、『5≦p/h≦20、かつ、1≦(p−w)/w≦99の関係を満足する』ことになり、これは、相違点2に係る本件発明1の構成を包含する。そして、パラメータp/h を、『10.0≦p/h≦20.0』の数値範囲に、かつ、パラメータ(p−w)/wを、『4.0≦(p−w)/w≦39.0』の数値範囲に、それぞれ特定することは、数値を好適化したものにすぎず、当業者が適宜調整する設計事項である。そうすると、引用発明に甲2技術を適用することにより、相違点2に係る本件発明1の構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである」と述べている。 |