知財高裁(平成29年12月26日)“エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレット群事件”は、「本件発明における『EVOH層の界面での乱れに起因するゲル』の意義は明らかでないというほかなく、本件特許出願時の技術常識を考慮しても、『成形物に溶融成形したときにEVOH層の界面での乱れに起因するゲルの発生がなく、良好な成形物が得られ』るという本件発明の課題は、理解できないというほかない」、「本件明細書には、本件発明の課題について、当業者が理解できるように記載されていないから、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであると認めることはできないし、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるとも認められない。この点について、被告は、『本件発明は、粒径500μm(0.5mm)未満の微粉の含有量を0.1重量%以下に制御すること(新規な解決手段)により、『不完全溶融EVOH』に起因する界面での乱れによるゲル(点状に分布する透明な粒状の不完全溶融ゲルであり、EVOHの一部が極端な場合には他の樹脂層に突出するような形態)の発生(斬新な課題)を抑制することができる(新規課題解決効果の奏効)という特別な効果を得る』ものであると主張するが、・・・・この課題は、本件明細書及び技術常識から理解することができない。したがって、本件発明についての審決のサポート要件の判断(サイト注:サポート要件を満たすとの判断)には誤りがあり、取消事由4には理由がある」と述べている。 |