知財高裁(平成29年2月22日)“生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置事件”は、「1審被告ワンマンは、本件装置1(サイト注:直接侵害品)を合計2億8356万4000円(税抜)で仕入れ、これを合計3億2211万2500円(税抜)で販売した。したがって、本件装置1の売上から仕入代金を控除した額は、3854万8500円(税抜)となる」、「1審被告ワンマンは、本件各部品(サイト注:間接侵害品)を合計209万3800円(本件固定リングにつき184万5000円、本件板状部材につき24万8800円。各税抜)で仕入れ、これを合計257万3484円(本件固定リングにつき222万2400円、本件板状部材につき35万1084円。各税抜)で販売した。したがって、本件各部品の売上から仕入代金を控除した額は、47万9684円(税抜)となる」、「以上より、本件装置1及び本件各部品の販売によって1審被告ワンマンが得た利益(税込。なお、1審原告の主張のとおり、平成26年4月分以降の取引も含め、消費税率は一律に5%として計算する。)は4097万9593円(=(3854万8500円+47万9684円)×1.05)と認められる。そうすると、上記利益の額が、本件装置1及び本件各部品の販売という本件特許権侵害の不法行為によって1審原告が受けた損害の額と推定されるところ(法102条2項)、これを覆すに足りる具体的事情の存在はうかがわれない。したがって、1審原告は、1審被告ワンマンの本件装置1及び本件各部品の販売により4097万9593円の損害を受けたものと認められる。また、上記不法行為と因果関係のある弁護士費用相当額の損害としては、410万円を認めるのが相当である」、「以上の認定判断について、1審被告ワンマン・・・・は、本件装置の販売に当たっては、仕入代金以外に納入据付費用、アフターサービス費用等の必要経費が生じているから、これらについても1審被告ワンマン及び同西部機販の利益から控除すべきであること、本件特許は本件装置の販売にほとんど寄与しておらず、その売上への寄与率が10%を超えることはないこと・・・・を主張する」、「しかし、必要経費の控除の主張については、そもそも、これらの経費が現実に生じたことを認めるに足る証拠もなければ、その算定根拠も概括的なものにとどまり、判然としない。したがって、本件において控除すべき経費はないというべきである」、「本件各発明の売上への寄与の程度に関する主張については、本件各発明は、共回り現象の発生を回避してクリアランスの目詰まりをなくし、効率的・連続的な異物分離を実現するものであって、生海苔異物除去装置の構造の中心的部分に関するものといってよい。すなわち、1審被告ワンマン・・・・指摘のとおり、選別ケーシング(固定リング)と回転円板との間に設けられたクリアランスに生海苔混合液を通過させることによりクリアランスを通過できない異物を分離除去する装置が従来用いられていたとしても、従来の装置は本件各発明が解決課題とする問題点を抱えていることは明らかであり、この点は需要者の購買行動に強い影響を及ぼすものと推察される。このことと、従来の装置の現在における販売実績等の主張立証もないことを考えると、本件各発明の実施は生海苔異物除去装置の需要者にとって必須のものであることがうかがわれる。他方、本件各発明が本件装置に寄与する割合を減ずべきであるとする1審被告ワンマン及び同西部機販の主張の根拠は、いずれも具体性を欠くものにとどまる。そうすると、本件各発明が本件装置及び本件各部品の販売に寄与する割合を減ずることは相当でない」と述べている。 |