知財高裁(平成9年34日)“建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材事件原告らは、本件特許請求の範囲請求項1の『前記通気胴縁部の上面の幅が、該通気胴縁部の底面の幅よりおよそ1.3倍以上を有する逆台形』につき『およそ1.3倍以上』の記載が上限値を特定していないとしても、必ずしも不明確とはいえないとの本件審決の判断は、誤りである旨主張する。しかし、本件発明は、建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材に関するものであるところ、逆台形とされる通気胴縁部の上面の幅が大きすぎると、十分な外壁通気層を形成することが困難になることは明らかである・・・・。また、本件発明において、通気胴縁部の形状は、上記形成部材の重ね合わせ敷設の目印形状となるものであり、上面の幅を底面の幅のおよそ1.3倍以上とするのは、重ね合わせ時に作業性を損なわないようにするためであるところ・・・・、上面の幅が大きすぎると、重ね合わせ時に位置が定まりにくく、作業性が損なわれる。よって、通気胴縁部の上面の幅については、十分な外壁通気層を形成することができ、かつ、モルタル塗り外壁通気層形成部材の重ね合わせ敷設時の作業性を損なわない大きさをもって上限とすることは、当業者にとって自明の事項というべきである。したがって、本件特許請求の範囲請求項1の『前記通気胴縁部の上面の幅が、該通気胴縁部の底面の幅よりおよそ1.3倍以上を有する逆台形』との記載が不明確ということはできない」と述べている。

特許法の世界|判例集