知財高裁(平成29年3月21日)“デマンドカレンダー事件”は、「(サイト注:引用発明が記載された引用文献によれば)デマンド値とは、電力会社との取引に使用される、30分間(デマンド時限)における平均使用電力量であるが、電力会社に支払う電気料金は、使用した電力量に応じて課金される電力量料金と、デマンド値によって更新される契約電力に応じて決定される基本料金とを加算した金額となるため、一度決定した契約電力を超えて電気を使用すると、契約超過金の支払が必要になったり、契約料金のアップにつながったりするので、デマンド値を抑制することで、電気料金を軽減することになる」、「引用発明は、信頼性が高く、かつ、多機能な遠隔管理システムを提供することができるようにする情報処理装置に関する、データ閲覧画面であり、ここで閲覧できるデータは、例えば30分間隔単位のデマンド値をグラフ化して表示したものである。一方、甲8発明は、エネルギー消費者に対して省エネルギーへの意識付けを行う省エネルギー支援システムに関する・・・・カレンダーのデータ閲覧画面であり、ここで閲覧できるデータは、例えば1時間単位の電力消費量である。引用文献には、デマンド値の抑制が電気料金軽減につながることが開示されているから・・・・、引用発明においては、デマンド値を監視することによってデマンド値を抑制するという目的があることが示唆されている。この目的は、電気使用量の抑制という点において、甲8発明の省エネルギーという目的と共通性を有している」、「そうすると、引用発明に、・・・・デマンド値を抑制するため、電力消費量を抑制するために、・・・・甲8発明を適用する動機付けがあるというべきである。したがって、引用発明に甲8発明の構成を採用して、相違点1〜4に係る本願発明の構成に至ることは、本願出願日当時の当業者にとって、容易想到であるといえる」、「原告は、引用発明の目的であるデマンド値を抑えることは省エネルギーにつながるわけではなく、デマンド値においては、単純に電力消費量の比較をすることは意味をなさず、デマンド値と省エネルギーの分野とでは比較する対象及び目的が異なり、出力内容において解決すべき課題も異なるから、引用発明と甲8発明とでは、技術分野の関連性が認められず、引用発明に甲8発明を適用する動機付けが存在しない、と主張する。しかし、前記・・・・で判示したとおり、引用発明においては、デマンド値を抑制するという目的があることが示唆されており、この目的は、甲8発明の省エネルギーという目的と共通性を有しているのであって、デマンド値であるデマンド時限における平均使用電力を下げることが、必ずしも電力消費総量を下げることと等しいとはいえないからといって、引用発明に甲8発明を適用する動機付けが存在しないということはできない」と述べている。 |