大阪地裁(平成9年40日)“ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ事件証拠・・・・及び弁論の全趣旨によれば、本件発明の実施品である原告製品は、本件発明の原出願である実用新案の出願日(平成6年1月6日)より前である同年9月2日以前に、Q2コープ連合に対して納品され、またQ2コープ連合においてそのチラシに掲載されて販売され、さらに同年0月0日には、被告において市場で取得された事実が認められるから、本件発明は、出願前に日本国内において公然実施された (特許法9条1項2号)というべきことになる」、「上記・・・の事由は、本件特許を特許無効審判により無効とすべき事由となるが、原告は、本件発明の原出願において原告が行った手続により、特許法0条2項に定める新規性喪失の例外が認められる旨主張する。そこで検討するに、特許法0条2項による新規性喪失の例外が認められるためには、同条3項により定める、同法9条1項各号のいずれかに該当するに至った発明が、同法0条2項の規定を受けることができる発明であることを証明する書面(以下『証明書』という)を提出する必要があるところ、証拠・・・によれば、原告は、本件発明の原出願・・・の手続において、同年2月2日、実用新案法1条、特許法0条2項に定める新規性喪失の例外の適用を受けるための証明書を提出した事実が認められる(特許法6条の2、4条4項の規定により、特許出願と同時に提出されたものとみなされる。)。しかし、同証明書は、公開の事実として、平成6年6月2日、原告を公開者、Q1生活協同組合を販売した場所とし、原告が一般消費者にQ1生活協同組合のチラシ記載の『ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ・・・・を販売した事実を記載しているだけであって、上記Q2コープ連合における販売の事実については記載されていないものである。この点、原告は、上記Q2コープ連合における販売につき、実質的に同一の原告製品についての、日本生活協同組合連合会の傘下の生活協同組合を通しての一連の販売行為であるから、新規性喪失の例外規定の適用を受けるために手続を行った販売行為と実質的に同一の範疇にある密接に関連するものであり、原告が提出した上記証明書により要件を満たし、特許法0条2項の適用を受ける旨主張する。しかし、同項が、新規性喪失の例外を認める手続として特に定められたものであることからすると、権利者の行為に起因して公開された発明が複数存在するような場合には、本来、それぞれにつき同項の適用を受ける手続を行う必要があるが、手続を行った発明の公開行為と実質的に同一とみることができるような密接に関連する公開行為によって公開された場合については、別個の手続を要することなく同項の適用を受けることができるものと解するのが相当であるところ、これにより本件についてみると、証拠・・・によれば、Q2コープ連合及びQ1生活協同組合は、いずれも日本生活協同組合連合会の傘下にあるが、それぞれ別個の法人格を有し、販売地域が異なっているばかりでなく、それぞれが異なる商品を取り扱っていることが認められる。すなわち、上記証明書に記載された原告のQ1生活協同組合における販売行為とQ2コープ連合における販売行為とは、実質的に同一の販売行為とみることができるような密接に関連するものであるということはできず、そうであれば、同項により上記Q1生活協同組合における販売行為についての証明書に記載されたものとみることはできないことになる」、「そうすると、上記・・・において認定したとおり、本件発明の実施品である原告製品は、その原出願日より前から公然販売されているというべきことになるのであるから、本件特許は新規性を欠く無効事由があるということになり、特許無効審判により無効とされるべきものと認められる」と述べている。

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