東京地裁(平成9年47日)“切断装置事件共有に係る特許権の共有者が自ら特許発明の実施をしているか否かは、実施行為を形式的、物理的に担っている者が誰かではなく、当該実施行為の法的な帰属主体が誰であるかを規範的に判断すべきものといえる。そして、実施行為の法的な帰属主体であるというためには、通常、当該実施行為を自己の名義及び計算により行っていることが必要であるというべきである」、「事実関係によれば、補助参加人(サイト注:原告側の補助参加人であって被告と本件特許権を共有する者)は、ヤマト商工第2工場の責任者として、水産加工機械の開発、製造に携わっていたが、同製造に要する原材料は、ヤマト商工の名義及び計算により仕入れられていたこと、補助参加人は、ヤマト商工から固定額の金銭を受領しており、水産加工機械の販売実績によってヤマト商工の補助参加人に対する支払額が左右されるものでないこと、顧客に対しても、水産加工機械の販売に伴う責任等を負う主体としてヤマト商工の名が表示されていたことなどが認められ、また、本件製品との関係では、七宝商事がヤマト商工に支払ったのは、ヤマト商工の請求に係る『BK−2フグスライサー(すなわち、本件製品)の代金310万円(税別)であって、ヤマト商工が同金員の全てを受領していること、七宝商事が補助参加人に支払ったのは、補助参加人の請求に係る『エフビックライサー BK−2 管理費(すなわち、本件製品のメンテナンス料)0万円(税別)であって、補助参加人が同金員の全てを受領していることが認められるから、本件製品の製造販売は、ヤマト商工の名義及び計算により行われたものであり、補助参加人の名義及び計算で行われていたものがあるとすれば、それは、本件製品のメンテナンスにとどまり、本件製品の製造販売ではないというべきである」、「原告(サイト注:本件製品をリースして使用した者であって被告から本件特許権の被告の持分について侵害を問われている者)は、本件製品は補助参加人が自ら製造販売したものであるとして縷々主張するが、・・・・補助参加人が形式的、物理的に製造販売に関与したか否かが問題なのではなく、いかなる立場で関与したか、すなわち、ヤマト商工の名義及び計算において行われる製造販売にヤマト商工の手足として関与したのか、補助参加人の名義及び計算において行われる製造販売を自ら行ったかが問題なのであって、原告の上記主張は、的を射ないものである」、「以上より、本件製品を補助参加人が製造販売(自己実施)したと評価することはでき・・・・ない」、「本件製品は、本件特許権の共有者である補助参加人が製造販売したものでなく、また、被告がヤマト商工による本件製品の被告以外の第三者への販売について容認していたとか、実施を許諾していたなどということもできないのであるから、本件では、消尽が成立する前提を欠くことが明らかである」と述べている。

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