知財高裁(平成29年6月12日)“スロットマシン事件”は、「原告が、『部材を取り付けるための係止片を当該部材の最外周面よりも少し内側に設ける構成』が記載されているものとして挙げる文献のうち、甲1及び63については、そもそもそのような構成が記載されているとはいえない(なお、仮に、原告主張のとおり、甲1及び63に上記構成が記載されていることを認めたとしても、これらの文献には、甲16及び17と同様に当該構成が採用される理由についての記載や示唆はないから、後記の結論に変わりはない。)。他方、甲16及び17には、上記構成が記載され、また、審判検甲1及び2のパチスロ機も上記構成を有することが認められる。しかしながら、これらの文献の記載や本件審判における審判検甲1及び2の検証の結果によっても、これらの装置等において上記構成が採用されている理由は明らかではなく、結局のところ、当該構成の目的、これを採用することで解決される技術的課題及びこれが奏する作用効果など、当該構成に係る技術的意義は不明であるというほかはない。してみると、甲16及び17の記載や審判検甲1及び2の存在から、上記構成がスロットマシンの分野において周知な構成であるとはいえるとしても、その技術的意義が不明である以上、当業者がこのような構成をあえて甲1発明に設けようと試みる理由はないのであって、甲1発明に当該周知な構成を適用すべき動機付けの存在を認めることはできない。したがって、甲1発明に上記周知な構成を適用し、相違点3−2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない」、「原告は、係止爪を有する係止片を挿入口に挿入して部材を係止する構成では、当業者は、取付作業の容易性(周辺の他の部材との干渉がないことなど)、取付け後の見栄え(取付け後に表側から係止片や挿入口が見えないようにすること)を考慮して、部材を取り付けるための係止片を当該部材の最外周面よりも少し内側に設けることを検討するのが通常である旨主張する。しかし、部材を取り付けるための係止片を当該部材の最外周面よりも少し内側に設けることにより、取付作業が容易になったり、取付け後の見栄えがよくなったりすることを認めるに足りる証拠はなく、当業者がそうすることを検討するのが通常であることを示す証拠もない。したがって、原告の上記主張は採用できない」と述べている。 |