知財高裁(平成29年6月29日)“ポリビニルアルコール系重合体フィルム事件”は、「審決は、本件ラウリン酸ジエタノールアミド混合物による実施例の開示 のみによって、請求項で『ノニオン系界面活性剤(B)』への上位概念化をしてもサポート要件に適合する理由として、『ノニオン系』という一群の界面活性剤が、ノニオン性であり、界面活性作用がある点で技術的特徴が共通し、その性質も類似することを主たる理由とするが、・・・・常温長期保管時における黄変の機序やその抑制の機序が明らかでない以上、ノニオン系界面活性剤に共通するノニオン性であり、界面活性作用があるという技術的特徴と、それに起因する性質の類似性が、本件訂正発明1の課題解決にどのように関連するかは不明であるといわざるを得ないから、実施例の拡張又は一般化がサポート要件に適合する理由付けとして不十分というほかない。したがって、ノニオン系界面活性剤が、ノニオン性であり、界面活性作用がある点で技術的特徴が共通し、その性質も類似するという審決指摘の点は、本件訂正発明1が特許法36条6項1号所定のサポート要件に適合することの理由となるものではなく、本件訂正発明1がサポート要件に適合しない旨の判断を左右するものではない」、「本件訂正発明1は、本件出願日当時の技術常識を有する当業者が本件訂正明細書において本件訂正発明1の課題が解決できることを認識できるように記載された範囲を超えるものであって、特許法36条6項1号所定のサポート要件に適合するものということはできないから、これと異なる審決の判断は誤りである」と述べている。 |