最高裁(平成29年7月10日)“シートカッター事件”は、「所論(サイト注:上告人の主張)は、本件の上告審係属中に本件訂正審決が確定し、本件特許に係る特許請求の範囲が減縮されたことにより、原判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更されたものとして、民訴法338条1項8号に規定する再審事由があるといえるから、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある旨をいうものである」、「特許権侵害訴訟の終局判決の確定前であっても、特許権者が、事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず、その後に訂正審決等の確定を理由として事実審の判断を争うことを許すことは、終局判決に対する再審の訴えにおいて訂正審決等が確定したことを主張することを認める場合と同様に、事実審における審理及び判断を全てやり直すことを認めるに等しいといえる。そうすると、特許権者が、事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず、その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことは、訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情がない限り、特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものとして、特許法104条の3及び104条の4の各規定の趣旨に照らして許されないものというべきである」、「これを本件についてみると、・・・・上告人は、原審の口頭弁論終結時までに、原審において主張された本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張しなかったものである。そして、上告人は、その時までに、本件無効の抗弁に係る無効理由を解消するための訂正についての訂正審判の請求又は訂正の請求をすることが法律上できなかったものである。しかしながら、それが、原審で新たに主張された本件無効の抗弁に係る無効理由とは別の無効理由に係る別件審決に対する審決取消訴訟が既に係属中であることから別件審決が確定していなかったためであるなど・・・・の事情の下では、本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張するために現にこれらの請求をしている必要はない(サイト注:訂正審判の請求や訂正の請求をしていなくても訂正の再抗弁が認められる場合に相当する)というべきであるから、これをもって、上告人が原審において本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張することができなかったとはいえず、その他上告人において訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情はうかがわれない」と述べている。 |