東京地裁(平成9年79日)“発光装置事件本件のように、使用者等(被告)が従業者等(原告)から職務発明について特許を受ける権利(又はその持分)を承継して、特許を保有するに至り、かつ、当該特許について第三者に実施許諾せず、当該発明を自己実施している場合、・・・・当該発明の実施品の期間売上高(当該特許権の存続期間満了までの予測値を含む)に、超過売上率及び仮想実施料率(当該実施品に複数の特許が使用されているときは、超過売上率、仮想実施料率及び特許寄与率)を乗じて、独占の利益(当該発明により使用者が受けるべき利益)の額を求める」、「被告が本件発明Aを自己実施したことによる超過売上げについて検討するに、・・・・『LE−(サイト注:A実施品)が開発された当初は、LEDを光源とするバックライトを使用した液晶テレビにおいて、LED直射式を採用する競合企業自体が少なかったものの、大手液晶メーカーにおいて光拡散レンズの採用が決定されたことなどから量産化が検討され、被告の有する技術力が売上に寄与したものであることが認められること、液晶バックライト市場において、導光式と直射式の各シェアはほぼ半分ずつであったものの、そのうちのLED直射式という限定された市場をみる限り、本件発明Aの代替技術といえるようなものはほとんどないかったこと、その後、被告がA非実施品の製造販売をするようになったことなど・・・・を総合考慮し、超過売上率を次の3つの時期に分けて検討する」、「@開発された当初(平成1年度)から大手液晶メーカーに採用され、量産化が進んだ時期(平成3年度から平成5年度(第T期)」、「AA非実施品が販売され、A実施品と併用されている時期(平成6年度から平成0年度(第U期)」、「B技術の陳腐化に加え、LED光源そのものの性能の向上、光拡散レンズの性能向上などにより光拡散レンズ数の使用数が必然的に減少することが予測される時期(平成1年度から特許期間満了の平成6年3月まで(第V期)」、「第T期については、液晶テレビのバックライトにおいてLED光源を利用し、LED直射式を採用するという限定された市場においてではあるがLE−』が(省略●程度の高い市場占有率を有していたと認められることなどを考慮し、超過売上率を0パーセントとみるのが相当である」、「第U期についてはLE』の約半分がA非実施品であり、代替製品が市場シェアの半分を奪ったといえることなどを考慮し、超過売上率を第T期の半分の0パーセントとみるのが相当である」、「第V期については、技術の陳腐化などを考慮し、超過売上率を第U期の半分の0パーセントとみるのが相当である」、「仮想実施料率についても、超過売上率と同様の事情を考慮し、第T期ないし第V期に分けて検討するのが相当である。第T期については、本件特許Aの内容及び実施料率の相場・・・・のほか、・・・・LED直射式のバックライト市場という限定的な市場ではあるがLE』の市場占有率が極めて高いことなど・・・・を総合考慮し、3パーセントとするのが相当である。また、第U期については、上記に加え、A非実施品が販売され、A実施品とほぼ同数を占めるようになっていること・・・・、光拡散レンズを搭載する液晶テレビ本体の価格は減少傾向にあること等を考慮し、仮想実施料率を第T期の3分の1である1パーセントとし、第V期については、更に技術の陳腐化等の事情を考慮し、第U期の半分の0.5パーセントとするのが相当である」と述べている。

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