東京地裁(平成9年71日)“生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置事件特許法9条1項1号にいう『公然』とは、秘密状態を脱した状態に至ったことをいい、秘密保持義務を負うなどして発明者のために発明の内容を秘密にする義務を負う関係にある者が発明の技術的内容を知ったというだけでは『公然』との要件を充たさないというべきである。なお、上記関係は、法律上又は契約上秘密保持義務を課せられた場合のほか、社会通念上又は商慣習上当事者間で当然に秘密とすることが求められ、かつ期待されている場合などにも生ずると解するのが相当である」、「これを本件についてみると、平成0年当時、Bが代表者を務める西部機販は、原告に対し、原告による生海苔異物除去機の試験・開発に協力していたというのである(当事者間に争いがない。)。そうすると、このように試験・開発中の生海苔異物除去機につき『選別ケースの外周に共回り防止ゴムをつける(乙3の8文書)という試験・開発内容については、客観的にみて原告の営業秘密であることが原告及び西部機販にとって明らかなものというべきであるから、原告と西部機販との間で秘密保持契約が締結されていたのであればもちろん・・・・、仮に秘密保持義務についての明示的な合意がなくとも、両者の間には上記事項を社会通念上又は商慣習上当事者間で当然に秘密とすることが求められ、かつ期待されている関係にあるというべきであるから、西部機販及びその代表者であるBは、原告に対し、上記試験・開発内容につき守秘義務を負うものというべきである」、「以上によれば、乙3の8文書に記載された技術的思想が特許法9条1項1号にいう『公然』となったとはいえない」と述べている。

特許法の世界|判例集