東京地裁(平成9年77日)“ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体事件特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、所定の要件を満たすときには、対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するというべきであるが、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するときは、上記のような均等の主張は許されないものと解される。そして、出願人が、特許出願時に、特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき、対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず、これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において、客観的、外形的にみて、対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するというべきである(最高裁・・・・平成9年3月4日・・・・判決参照。しかるところ、上記最高裁判決の判示に照らせば、本件製造方法は本件発明の構成と均等であってその技術的範囲に属するものと認められる。これに対し、本件において、被告らは、本件製造方法がトランス体の出発物質を用いているのに対し、本件発明ではシス体の出発物質を用いる製造方法しか記載されていない点に関し、原告が、別件の特許出願(乙0)ではビタミンD構造におけるトランス体の出発物質について記載しながら、本件特許出願に際しては、ビタミンD構造におけるトランス体の出発物質を特許請求の範囲に記載しなかったことは、上記の『意識的除外』に当たると主張する」、「乙0にはトランス体のビタミンD構造を出発物質とすることを内容とする本件発明と同一の構成の発明が記載されているとは認められず、被告らの上記主張は前提を欠くものであるから、原告が、本件特許出願の際に、本件製造方法(トランス体のビタミンD構造を出発物質とするマキサカルシトールの製造方法)を特許請求の範囲から意識的に除外したものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえない」と述べている。

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